藤本の辛口コラム
2007年6月29日「リファレンススピーカー」その1

パイオニアからTAD−R1が登場した。
RはリファレンスのRと解釈するが、果してその実力は如何程の物か?
惜しまれながら廃番となったM1と比べてどうなのであろうか?

早速導入したので、その実力を検証 時系列で書き込む事にした。
まず6月26日の第一声からだが、その前に接続した機器を紹介しよう。

TAD-R1大試聴室

47Labo PITRACER/DENTECSoulNote dc1.0/ASCバージョンDENTEC TVC-ADENTEC DP-NCD1TAD−R1
という流れとなるが、当然ながら振動対策にVEB、ケーブルには銀線CMSシリーズ、電源にはIPT4000Aが奢られている。

ここで意外に思われるのが、DP-NCD1だろう。
小型アルミケースのプロトモデルだが、勿論TVC-NCDが出来上がるまでの代役である。

DP-NCDしかし、このハーフサイズのパワーアンプが只者ではない。
おおよそ不釣合いな組み合わせにも関わらず、堂々とした出で立ちのR1をいとも簡単に振り回してしまったのである。
これには、エージング完了までの代役と考えていた私のみならず、パイオニアの担当者もビックリしてしまった。
側に置いてあったTVCP用外部電源が繋がれていると勘違いしてしまったくらいあっけなく、静けさと力強さを伴いながらR1を浪々とドライブしたのだ。

TAD-R1

2007年6月29日「リファレンススピーカー」その1

音出しを始めて今日で4日目だ。
R1は大きくバランスが崩れる事もなく徐々に良くなってきている。
これ程素性の良い従順なスピーカーも珍しいのではないだろうか?

肝心な音質であるが、R1とM1の決定的な違いは、音の出だしのアタックが揃っている事だろう。
M1の様な2段積みのスピーカーは海外製品に多いが、上下の接触部分で振動の伝達スピードが鈍りアタックが揃わない。
つまり、打楽器などのパルシブな楽器の再現が不得手なものが多い。

いや、それは何も打楽器だけの話では無い・・・ 実は全ての楽器において重要な要素なのである。
基音に対して倍音成分が綺麗に乗って始めて本物の音となるのだが、オーディオでは中々それがうまく行かない。
ユニットを取り付けたバッフルの振動伝達スピードが速く、電気的にも物理的にもズレが無いという状況は中々作れないのだ。
それが出来た時、始めて等身大の実在感となって現場が現れる筈だが・・・

R1には大きな可能性を感じる
既にその片鱗が見えている・・・

記2007年7月9日リファレンススピーカー その3

R1のエージングを開始して今日で13日目だ。
一昨日の夜は高音が煩く、とてもお客さんに聴かせられる様な音ではなかったが、こんな時に限って試聴の予約が入ってしまい、はて、どうしたものか?と考え込んでしまった。

とは言っても、鳴らすしか手は無い。
普通なら、音の柔らかいケーブルで誤魔化してしまうのだろうが、そんな事はしたくない。
もう一度機器の配置やケーブルの引き回しを見直したところ、かなり良くなったので時間ギリギリまでその状態で鳴らしておく事とした。

Pioneer TAD-R1

メーカーに言わせると、普通に鳴らしていたらベリリュームの振動板はまともな音になるのに数年も掛かってしまうという。
とてもじゃないが、そんなに掛かったのではお話にならない。
それは鈍なアナログアンプでの話だろうから、最新ディジタルアンプNCD1なら結果は異なる筈だ。

試聴当日の朝、煩い感じはかなり高域へシフトしていた。
これなら、JAZZを聴かれるお客さんなら問題ないだろう。
案の定、持ち込まれた3枚のCDは、「凄い!」と一言の感想となったのである。
如何に凄いのかは、そのお客さんが現在使われている4WAYマルチアンプシステムが物語る。

Pioneer TAD-R1

EV30W 80cmウーハー JBL222030cmウーハー+4560BKフロントロードエンクロージャー2440ドライバー+ウッドホーン 2405ツイーターx2といった怪物システムを使っている人が唸ったのであるから、その凄さは推して知るべしであろう。

リファレンススピーカー その4

さて、既に気付かれている方もあると思うが、写真ではパワーアンプが入れ替わっている。
そう!TVC-P−NCD1が出来上がったのだ。

7月21日のASC定例会に向けてベストの音を出そうと組み上げたのだが、今回は新しい試みを行ってみた。
それは、アンプ製作の経験者なら誰でも考える事だが、おそらく誰もやっていない事である。

アンプの電源回路には整流回路があり、殆どのメーカーはそこに大容量の電解コンデンサーを使っている。
しかし、容量を増やせば増やすほど充放電を繰り返すスピードが遅くなり、鈍い音となってしまうのだ。
また、極性のある電解コンデンサーを使うと言う事自体に、ハイエンドアンプとしての問題があるのではないだろうか?
小容量でハイスピード化を狙っている47Laboや、小容量コンデンサーを多数並べて低インピーダンス化を図ったアインシュタインなど、良さは有るもののやはり電解コンデンサーの呪縛からは逃れてはいない。

私は、チューニング時にスペースが許せば無極性の電解コンデンサーを使う様にしている。
同じスペースであれば容量は半分以下となってしまうが、容量など然程問題ではなく、 S/Nが向上し非常に抜けの良い音となるからだ。

では今回のアンプで一体何をやったのか?
反応の鈍い電解コンデンサーとは無極性も含めて決別する方法・・・
そう!全てフイルムコンデンサーで仕上げたのである。
ネットワーク用に開発された大容量のフイルムコンデンサーをチューニングに使っているからそれは手元にあった。
しかも、音質向上の切り札SC処理までされているのだ。

さて、音出しの結果だが・・・
これは間違いなく誰も聴いた事の無い音だ。
コーン型のTAD R1がホーン型になったのか?と錯覚するほど音抜けが良くなっている。

S/Nの改善によるものだろうが、やろうと思えば10年以上も前に出来た筈だ。
くそ〜!時間を損してしまった・・・

リファレンススピーカーその5

随分間が空いてしまったが、やはりスピーカーのエージングには時間が掛かる。
電気的なエージングは400時間程度で終わるが、振動板の機械的なエージングはそうは行かない。
TADの様な金属系振動板では尚更だ。
弊社の様に24時間音出ししていても数ヶ月掛かるのだから、一般的な販売店では本来の音をお客さんに聴いて貰うには何年も掛かってしまうのである。

お客さんはエージング途中の音を聴きたい訳ではない。
エージング終了時に出てくる音が、自分の求めている音かどうかを知りたいのだ。
この事は、メーカーや輸入代理店がスピーカーの試聴機を持ってくる度に煩く言っている。
しかし、一向に改善される様子すらない。

エージング途中の音が如何に煩くデリカシーの無いものかは、当然エンジニアには解っている筈である。
しかし、営業的な結果を急ぐが為に、エージングという大切なプロセスを販売店任せにしているのだ。
結果的にそのスピーカの本質をお客さんが理解してくれるのに何年も掛かってしまい、結果が出るのを非常に遅らせている。
この小学生でも解る簡単な理屈を理解しようともしない経営陣、そいつらは一体何なのだ?本当に「馬鹿」としか言いようが無いではないか?

私は出荷する全てのスピーカーをエージングしろと言っている訳ではない。
店頭の試聴機だけでよいから、お客さんに聴いて欲しい音までエージングして出荷しろと言っているだけなのである。

聞く耳を持たない馬鹿を相手にしてもしょうがないから、R1の話に戻ろう。
24時間数ヶ月鳴らしても中高音の煩さが取れないので、痺れを切らしてネットワークをチェックしてみた。
くそ〜!あろう事かコイルが1個反対を向いているではないか!!!

これは一体何なんだ!?量産機のS-1やS−3ではちゃんと揃っているのに、600万もする製品がこんな有様では全くお話にならないではないか!
思いっきり腹を立てた私は、1時間後にはコイルの向きを揃え、ついでに低音側のケミコンをフイルムコンデンサーに交換していた。

見てろ〜!こうなったら、このユニットを極限まで鳴らしてやるからな〜
またエージングのやり直しだ・・・
しかし、何で私がメーカーがやるべき事をしなければならないのだろうな?
ライバルのエベレストが何で売れてるのか?少しは考えてみろよ!

リファレンススピーカーその6

今度はえらく辛口だね!
前回のコラムを読まれたお客さんが口々に言われる。
確かに腹立ち紛れにキツイ事を書いてしまったが、ユニッの作りを見て、これの実力はこんなものじゃないという思いからなので、関係者の方にはご勘弁願いたい。

さて、問題のネットワークだが、S1-EXやS3-EXでは回路変更無しで作り変えたが、
同じ事をやっても能が無いのでオリジナル回路とした。
単純な12db/octの回路だが、中高音のレベルコントロールが抵抗式ではなく、コイルよりタップを出して切り替えるものだ。
これは、ALTECなどが昔やっていたユニット間の繋がりの良い方式だが、私はコアーによる色付けが我慢ならず、空芯コイルからタップを出して調整している。
おまけにWウーハーを並列接続せず、それぞれのユニットに回路を組んだため、重量は優に20kgを超えてしまった。

エージングが完了した時点で調整に入り、補正回路はウーハーのみで収まった。
昔なら「1週間毎に部品を取り替えてはFMのホワイトノイズでエージングして判断する」納得いくまでこれを繰り返し、仕上がるまでに何年も掛かっていた作業である。
しかし、今は「スーパークライオ処理」と「D-Clock」で正確に再現される「確認音源」、そして位相ズレの無いディジタルアンプ「NCD1」が有る。
気が遠くなる様な作業が、たった1ヶ月足らずで仕上がってしまうのだから本当に夢の様だ。

それも、楽器の音色から位置関係まで確証が有るから出来る事。
試しにミンガスの井上先生に聴いて頂いたところ、自分の楽器の音がちゃんと出ている!
特にオーディオ機器からは出ないと諦めていた、ウッドベースのGの音 自分が大切にしているこの音が正確に出ているから嬉しいとお褒めの言葉を頂いた。

しかし、時に違和感を覚えるほど微弱な癖に反応するTADのユニット。
これが無ければこんな凄い音は出てこなかったに違いない・・・
高級メーカーは世に沢山あれど、大半が他社のユニットを流用するアッセンブルメーカーである。
自社生産出来るパイオニアでなければ作れなかったこのユニットは、正に称賛に値するものだ。

日本のオーディオメーカーもまだまだ捨てたもんじゃないと実感した!!

リファレンススピーカー その7

「おわり」としておきながら、その後色々あったので報告させていただく事にする。

流石に、このコラムはメーカーにもショックが大きかったらしい。
製造責任者を伴い、お偉方がお出ましになるという・・・

営業から電話でアポがあったが、一体何しに来るの?と聞いたら「謝りに」ということである。
またムカッとして、俺に謝って貰っても意味がないと一旦は断ったが、状況の説明をしたいという事なので、素直に受け入れる事にした。

当日の製造責任者の説明によれば、在庫品を全てチェックしたが一つとして間違いは無かったと言うのだ。
それじゃあこれを見てみろと取り外したネットワークを見せたところ、全く信じられないという表情で写真を撮って現場へ連絡している。

横で話を聞いていると、本当にこの1セットだけの単純ミスという事らしい。
よりによって、それが一番煩い私のところに回って来たのであるから、世の中本当に皮肉なものだ。

いや、これが一般ユーザーの手に渡っていたら・・・ しかもその方が、リタイアして余生を楽しみたいという方だったら・・・
と考えると、万が一にも有ってはならない事なのである。
ならば、むしろ謝って済む(済ませるしかない)私のところで良かったのかも知れない。

少なくとも一人の音楽ファンが音楽を楽しめずに失望するのを防げたのだから・・・

今回の騒動は、尻に火が付かなければ動かない私が、ネットワークに挑戦するキッカケとなったのは間違いない。
こんな事でもなければ、流石の私も600万のスピーカーを改造する気にはならなかっただろう。
その後の調整で、「オールホーンが鳴っているみたいだね」とお客さんに言われるほど朗々と鳴っているR1を聴くにつれ、むしろ良かったのかも知れないな?と思うようになった。


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■おわり■

 



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