JBL43シリーズのチューニング

2017/8/8

大型スタジオモニターの43シリーズだが、1970~80年代に流行った4343だけでも日本で1万本以上が売れているという。
家電量販店が並行輸入を扱い、新聞1ページの広告で売りまくっていたのを覚えておられる方も多いのではないだろうか?
当時はオーディオブームで並べていれば売れていた時代だから、音楽ファンではなく音マニア達が挙って買っていた訳だが、そんな人達も子育てが始まると共に置き場所が無くなり、押し入れや倉庫で眠らせていた・・・
 
子育てが終わり、昔を思い出して引っ張り出してみたらエッジはボロボロに朽ち、慌ててユニットだけを修理しても接触不良だらけでまともな音が出る訳もない。
そんな人達は諦めて処分したり、店員に勧められるままB〇Wなどの小型スピーカーに買い替えたりしただろうが、38cmウーハーの迫力を知った者が、そんな箱庭的な音で満足できる筈もないではないか・・・
 
そんな中でも生演奏を聴かれる音楽ファンで今でも大事に使われている方があるので紹介させて頂く事にする。
 
静岡のお客様が仕事をリタイアされ、これから10年間4344でユックリ楽しみたいとのご要望だが、関東出張の帰りに引き取りにお伺いし、翌月の出張までに仕上げてお届けする事となった。
 
4344の引取はスムーズに出来たが、残ったルボックスのCDプレーヤーとSANSUIのプリメインアンプも同年代なので、安心して使って頂ける様スピーカーだけではなくトータルで整備しなければならない。
 
先ずは例外なく朽ちているウーハーとミッドバスを自慢のセーム革に張り替え鳴らしてみた。

↑JBL 4344ノーマルエッジ

↑セーム革エッジ張替後

↑セーム革エッジ張替後 全体

確認音源「14YA」を掛けると予想通り詰まった音で抜けが悪く、付帯音がかなり多い。
ウッドベースとピアノがまるで安物の楽器を素人が弾いている様に聴こえる。


2017/8/17

何故著名なスタジオモニターがそんな音しかしないのか?
その原因は大量生産に適した製造方法に問題があると言っても過言ではない。
 
問題点と改善方法を上げると
 
(1)内部が安物のファストン端子による接点だらけであり
 信号経路の50以上の接点が音質劣化の原因となっているのは誰の目にも明らか
「ケーブルや部品を直接半田付し、入力のスピーカー端子以外の接点を極力無くす」
 
(2)ネットワークのコンデンサーが方向管理されていない
SC処理済SOLENを方向管理して取付」
 
(3)薄い銅箔のプリント基板ではパルシブな音楽信号通りに電流が流れない
「スズメッキ線で基板の裏打ちを行い補強」
 
(4)ミッドバス ミッドハイ ハイのアッテネーターが可変式ボリュームで接点となる
「基板上へ無誘導抵抗で固定式アッテネーターとする」

改良前

改良後

以上が改良点であるが、電気的知識の無い方にも明確にお判り頂けるのではないだろうか?


2017/9/6

さて、最後の仕上げはSA(サウンドアクセラレーター)の取付だ。
ユニットが左右で8個も有り、予算の関係でSA1 20,000円を取り付けさせて戴いた。
残念ながら写真を撮るのを忘れてしまったので、SAのページを参照して戴きたい。

出て来た音だが、これがJBL?(良い意味で)という音に変化した!
中低音の音階が明確で重さは微塵もなく、あの重いコーン紙(鉛のリングを付けて態々重くしてある)とは思えない初動感度だ。
 
フルレンジが鳴っているのか?と錯覚するほど纏まりが良く、しかも4WAYならではのワイドレンジ。
妙な癖など殆ど無く、ジャンルもクラシック ジャズ ポップス ロックまで何でも来いである。
 
しかも、この評価が整備で預かってきた同年代のSANSUIのプリメインアンプREVOXのCDプレーヤーB226を接続しての話だから信じられない方も多いのではないだろうか?
最も、最上流のB226にはDTDクロックによるチューニングを行ったので反則的ではあるが・・・

今回のチューニングと整備一式でお客様が使われたのは120万円程度であるが、これが高いか安いかは人其々だろう。

一般的な選択で同程度の製品に買い換えれば2~300万円は掛かるだろうし、音質に満足される可能性はかなり低くこんなものかと諦めるしかないだろう。
一方でエッジのみの修理とした場合、内部が接点だらけでプリント基板なのだから満足できる筈もないし、それをアンプやCDプレーヤーの所為にして買い換えたところで、これまたこんなものかで終わってしまうだろう。
 
つまり、出費以上の満足が得られる選択肢として
買い換えではなくこんな手段も有るという事をご承知おき戴きたい。
 
修理を兼ねたチューニングなら家族への言い訳も立つだろうし、この4344で毎日笑顔で音楽を楽しまれているお客様が居られる事は、紛れもない事実なのだから。
 
 
■こちらもお聴きください
スピーカーシステムのチューニングによる劇的な音質改善効果を実際の音でお知らせするため、スタジオモニターとして有名なJBL4344を使って改良前後の再生音を録音してみました。
 
>>> JBL43シリーズのチューニング

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