広島県 Y様

私が藤本社長に初めてお会いして以来、早や25年が過ぎました。
ここからしばらく私事の話となり恐縮ですが、デンを語らせて頂きたく、長文ながらご勘弁下さい。

当時のオーディオ業界は元気そのものであり、学生であった私にも金はないものの魅力ある趣味であり、夏休みともなればバイトに精を出し、金を工面しては少しずつアイテムを揃えていったわけです。
そんな中、某デパートの一画に中古のオーディオ製品を専門に扱っている店があるとの情報を得て、足を運びそこにいらっしゃったのがデンの藤本社長でした。その時は名前すら存じませんでしたが。

無知が故に、陳列されていた機器は当時の私の目にはジャンクとしか映らず、当時の著名であった製品は43シリーズのような高価なものであり、結局お世話になったのはアンプを数回買い取って頂いただけ。つまり、儲けにならぬ客としてお世話になったわけです。とはいえ、藤本社長にとってはたまに来るわけのわからぬ若僧、ということで記憶にすらなかったことでしょう。

その後、初めて普通の客となった、つまり買い物をさせて頂いたのは、就職してからのことです。学生時代からの憧れであったセンモニをゲットし、そのとにかくその美しい音色に聞き惚れて送っていた当時を覚えております。そのうち海外へ出向することになり、独身が故に輸送の規程容量も限られていたものの、身の回りの物は殆ど犠牲にしてセンモニをはじめとする愛器を海外へ連れて行きました。しかし、出向先は米国でしたので、現地では破格の安値で有名製品が入手可能な環境もあり物欲に走ってしまい、帰任時にはアポジーデュエッタを持ち帰った次第です。アンプもそれなりに高価なものを揃えて。

帰任後は、CDプレイヤーのみローエンドの価格品であったので、まともな製品を揃えるつもりでしたが、何故かしらあのおっさん(失礼、藤本社長)の店へ行ってみようか、と何気なく思い出し足を運んだわけです。
店の雰囲気は当初のイメージとは異なり、試聴室を備えるオーディオショップ!へ変貌しておりました。SoundDenのネオン管も映えて。

センモニの時は店に着くなり、『これ下さい!』の一言で購入しただけですが、CDプレイヤーで初めて、『何かいい製品はありませんかねー?』という相談の声に対して、『まー来て下さい』と案内された試聴室で拝聴したのがMARANTZ CD-95(デンテックチューニング版)でした。

価格を見ると定価から割引どころか、かなりのプラスαがのっており、チューニングの内容を尋ねると訳の分からぬコンデンサーの方向管理とその位置あわせや振動対策云々。当時の私には、正直胡散臭いイメージの(失礼、意味深な)説明を聞いたわけです。

肝心の試聴では、確かにいい音がする。しかし、全ての機器や環境の異なる店でチューニング効果を確認が出来るほどの耳も持たぬため、ノーマルとの比較試聴は?と尋ねるとノーマルはストックしていないので他の店で聞いてくれ、とのこと。商売っ気がないなと感じたものの、逆にそこまで自信を持って言われると、いい音である事は確かなのだから...他の店に足を運ぶのも億劫になり、とにかく聞いた音を信じる事に決め、めでたく購入。アポジーの高域もメローな表現に変貌し、今の言葉でいうオカルト商品でなかったことを実感したわけです。その裏付けとなる技術的な理論が存在するのだから当たり前ですが。

そのアポジーも行動的になってきた1歳の息子に頭突きをくらいそうになり、スピーカーの買い替えを相談することに。アポジーと正反対の音質傾向を持つ製品である4344への買い替えを相談するにも、藤本社長は客の購買意思に水を差すだけ。どちらが客?と言いたかったものの、軟弱な私は頭突きの被害は無用のクリプシュWBOを音質も気に入り購入。決して4344が悪いという意味ではなく、難しい代物である事を知っておられたわけです。それは、結局4344を諦め切れず、結局他店で購入して分かった事です。中途半端な使いこなしレベルではなく、ある程度の改造じみたチューニングが必要と感じました。12年間でギブアップでした。しかし、この4344の購入を無神経に打ち明けても、『オレの言う事を聞かないから』、というような反応は皆無で、むしろクリプシュの使いこなしに手助けを出来なかったことに詫びを頂き、この上ない恥ずかしさで一杯でした。
しかし、この4344をベースに12年間の取り組みの中で、色々とお世話になりました。

それは、インシュレーター類のデンテック商品購入以前に、銀線(当時は撚り線)を材料として購入し、タコ糸を地道にまいてスリーブにより被覆処理を行ってケーブルを製作する方法手順等々、企業秘密にも似たノウハウを多数頂戴したことです。その後もサウンドデンから購入したものは、インシュレーター・ケーブル等のアクセサリーや部品類、唯一機器と言えるものはX5000(デンテックチューン)位でしょうか。

更に、2回目の海外出向では現地購入が故に破格の安値であるヴィンテージ物のスピーカーとアンプを購入することを決断したことです。ヴィンテージといえば、素性のバラつきが最も気になる買い物であり、ましてオークションなどとんでもない話です。しかし、敢えてそうしました。これ以上の買い替えをしたい気持ちにならずに済むものを入手し、問題があればあの社長にお願いすれば何とかなるはずと。そうでなければ、間違いなく踏み切れませんでした。

ヴィンテージ物の機器として、社長が常々その素材としての良さを語られていたジェンセンインペリアルPR100とアンプMC30を現地のオークションサイトで入手しました。PR100とはいえ、純正とは仕上げが異なるもので、これもどのような代物であるかを古い資料から藤本社長に調べて頂いたような次第です。このとことん図々しい人間に対して、社長は無反応なんです。

これまで、サウンドデンに還元できた金額は微々たるもの。にもかかわらず、頂いたものはお金では手に出来ない多数の音質改善に対する考え方です。
多分、社長はご自分の存在により音楽を楽しめる環境作りを他人に分け与える事に幸せを感じられるのでしょう。ビジネスには厳しい社長ですが、そうでなければ一般人には苦行と言えるようなあの出張クリニックを長年続けられないでしょう。違ったらごめんなさい。そんな甘いものではないことも分かっておりますので。

ところで、先々月に愛器のX5000がご臨終となりました。度々内部をいじくりまわしておりましたので災いしたのでしょう。困った私に中古品のLHH500R(当時のチューニング済)に話題のクロックを載せて頂き購入しました。

クロックの安定動作までに時間は掛かったものの、その音質には脱帽です。思えば15年前に購入した上述のCD-95に近い商品に戻ったわけですが、素材は同レベルでもその素性の良さを見極め、それらを更に新技術で磨き上げる、といった一貫した考え方の賜物と理解しました。
更に以前購入していたウルトラアッテネーター(部品)用の箱を交換したく、オリジナルヴァージョンのシャーシを昔の余剰部品だからと安く購入させて頂きました。そのシャーシに対して、私は玉砂利の効果とシャーシの大切さをヒントに、玉砂利埋没式ボックスを自作してみました。
厚い玉砂利の壁を間接シャーシとして、振動対策にも共用する考えでしたが、素晴らしい効果を手にすることが出来ました。構造はいたって簡単。オリジナルのシャーシ内部仕切り板前半分に玉砂利を充填した状態で、シャーシを玉砂利に埋没させるための箱を準備しただけです。
勿論、デンテック商品には敵わないでしょう。ですから、営業妨害となる心配もせずに書かせて頂いています。
しかし、同じ理論上にある対策である限り、改善レベルの大小は別にして、必ず良い方向にレベルアップ可能であることを確信しました。

最近のデンテック商品は、半端じゃないレベルのこだわりスペックとその音質が故に、高額なものが殆どであり、正直全く手が出ません。
しかし、いつの日もデンテック商品をヒントにオーディオという道具を個人レベルでも磨きながら音楽を楽しんでゆける道が残されていますから幸せです。これまで、こんなに非常識なお付合いをさせて頂いた藤本社長に、感謝の意を込めて、今一度御礼申し上げたいと思います。
『有難うございました。そしてこれからもヨロシクお願いします。』
ということで、私より10歳年上の社長は私より10年以上長生きして頂くことを切にお祈り申し上げます。
どうも、私の無神経さは治りそうにありません。

部屋が八畳間と狭いため、屋外からの撮影でも入りませんでした。
広角カメラが欲しいですね。

使用機器は、記述するまでなくご存知と思います。
ツイーターは自作でカットオフ周波数20000Hzで12dB/octのスロープでネットワークを設定しております。ユニットは$20の安物ですが不十分とはいえ40000Hzまではスペック上でているはずです。材質的に近いファブリック系を選択しましたが、気に入っています。

PR100には、下から
1. 木製パネル
2. ブナ材無垢削り出しの小物入れ(百均でゲット)に玉砂利を充填
3. ST-BASE
の順でセットしています。

長く商い(商売ではなく)を続けていると、お客様が成長される様を目の当たりにします。
Yさんもその内の1人で、学生時代からオヤジになるまでお付き合い戴いている訳ですが、彼は機械設計のエキスパートとして、かのSONY CDP-X5000のステンレスメカの製造に手を貸してくれました。
もし、X5000がまだ製造されていたなら、メーカーに睨まれながら現在でも製造を続けていたに違い有りません。
残念ながら、ステンレスメカは150台の改造で終わってしまいましたが、チューニングされたX5000は未だにトップレベルの音質を誇っており、この出来事は正にローテクの勝利だと思っております。
私は商いはヒフティーヒフティーだと考えており、それは一方的に利益を得ようとしても成り立ちません。
むしろ、相手がお客様であっても、銭金抜きの付き合いの方が大切なのではないでしょうか?

By 藤本

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