「ウェストミンスター格闘記」
中学生の頃からアンプやスピーカーボックスなどの自作を行い、自分だけのオンリーワンオーディオ装置を楽しんでいたが、その熱も会社員となってからは徐々に冷めてしまい、装置もいつの間にかメーカー製の何の変哲もないものになっていった。
ところが3年ほど前、押入れからプレーヤーを出してきて古いレコードを聴き、オーディオ熱が復活してしまった。忘れていた、あたたかい音に再会したのである。一念発起、いずれはオーディオルームを持ちたいという中学生の頃の夢を再び目標として掲げ、MC275とタンノイ・カンタベリの組み合わせで、かなりの音を出せるところまでたどり着いた。
ここまで来たらもっと上級を目指そうと、サウンドデンのHPで私でも買えそうなウェストミンスターを見つけたのが苦労の始まりである。MC275ではスピーカーの直径範囲でしか音が出ず、もっと駆動力がありそうに思えた300Bプッシュプルアンプを買い求め、
スピーカーボックス全体から音が出る状態までこぎ着けたが、いろいろ欠陥も耳につくようになり、サウンドデン藤本社長にクリニックしていただくこととなった。おかげで、やっとスピーカー本来の実力が発揮できているかなというところまできたが、藤本社長のお薦めもあり、同じ悩みを持っている人に参考になろうかと、経験談をHPに投稿させていただくことにした。
ちなみに、現在の装置は下記の通り。
- スピーカー タンノイ・ウェストミンスター・ロイヤル
- スーパー・トィーター タンノイ ST-200
- メインアンプ ALCオーディオラボラトリー社製 300Bプッシュプル
- プリアンプ SME SPL-HE
- SACDプレーヤー DENON DCD-SA1
- 電源 ノイズカット電源 IPT-1000An
以下の表に、藤本社長のクリニックを受けながらどのように課題を解決してきたかを示す。太枠で囲った範囲は一日に実施したものを表している。
スタートは、ブーミーな低音を銀単線スピーカーケーブルで解決できるのではないかと考えたことから始まる。
結果的にそれは間違いであったが、まだまだ上を目指せるという自信と、藤本社長に相談すれば何とかなる、ということが分かったきっかけともなった。
課題と対策およびその効果を時系列で記載しているが、一つの課題が解決し大きく改善されたからこそ次の課題が浮き彫りになったのであり、同じような表現でも悩みのレベルは全く異なる。それだけ各対策の効果が大きかったということである。また、対策の組み合わせが重要であり、順序を変えれば、課題の順序も変わってくる可能性がある。
課 題 | 対 策 | 効 果 | |
---|---|---|---|
3/26 | (低音がブーミー) 注)この課題に対する対策は私が設定したもので、結果的に誤りであったが、その効果たるや抜群であった。 | 銀単線スピーカーケーブル | ・透明かつ上品な音になった ・音に広がりがでた ・ハム音が少なくなった ・中高音の同軸ホーンが共振したようないやな音が無くなった ・ブーミー音は多少減少した感じだが大きな改善はない |
4/22 | 低音がブーミー | スピーカー振動処理ベース | ・長時間かけて改善効果が出てきた。いまではしまりのある低音になっている。 |
ピアノの音やオーケストラ強奏部で音が濁る | プリアンプに振動処理ベース挿入 | ・効果抜群。濁りがとれた。それまで使っていたインシュレーターが悪さをしていた | |
– | SACDプレーヤーに振動処理ベース挿入 | ・効果抜群。よりクリアな音になるとともに、出力レベルが上がった感じ。 | |
– | SACD用のパワーケーブル、ラインケーブルを銀単線に交換 | ・即座には効果は分からなかったが、現在ではトータルな対策として効いていると思われる。 | |
5/8 | オーケストラの強奏部で音が濁る(一部のCD | メインアンプに振動処理ベース挿入 | ・濁りがとれた |
– | プリ・メイン間のラインケーブルを銀単線に交換 | ・この状態で何の問題もないすばらしい音が実現した。 | |
– | SACDプレーヤーのクロック交換(当日は代替品で試聴) | ||
– | ノイズカット電源採用 | ・非常に艶やかな音になった ・部屋中に音が充満する感じ ・録音の古いCDが復活した |
最後の電源装置を試してみる前の段階で、すばらしい音が実現できた。「これだけよくなって、後、何がよくなるのですか」という質問に、「もっと艶のある音が部屋中に充満するようになる」と答えていただいた。信じがたかったが、本当にその通りになり、現在エージングが進んで、日々よくなっているという状況である。藤本社長さん本当にありがとうございました。
さて、ここまで来て、次に何を目指すか。どこかで満足すればいいのだがそれで済まないのが、オーディオファンの悲しさ。絶えず前進していないと気が済まない。かといって資金に限りがある。
そこで私はできるだけ簡素なアンプを製作して、部品レベルでよい音を追求していきたいと考えている。今回の経験で、音は回路で決まるのではなく、個々の素材をいかに電気が良く通るようにするかで決まるということを確信したからである。ここまで良くして頂いて、焦る必要が無くなったのでじっくり取り組めると思う。
ウェストミンスターがうまく鳴らずに悩んでいたとき、藁にもすがる思いで、ノウハウ探しにあちこちホームページを調べた。
ほとんどが悪口ばかりで、中にはバックロードホーン型で構造上の欠陥であると酷評したものもあり、すっかり悲観したこともあったが、このように素晴らしくなった音を聞くと、タンノイというのはすばらしいメーカーでその最上位機種を選んで間違いはなかったとつくづく思う。本格的には聴き比べていないが店頭で他社製最新技術のスピーカーの音を聞くことがあるが、やっぱりクラシックはタンノイと意を強くする。
K様とは、2004年4月に下取品のTANNOY WESTMINSTER/ROYALを納品させて戴いてからである。
その後、ご自分なりに格闘され、やはり低音に不満が残ると言う事で銀線スピーカーケーブルをご注文戴いたのがきっかけとなり、クリニックを依頼戴いた。
1年ぶりにお伺いして、スピーカーとプリアンプ以外は全て入れ替わっていたのには正直驚いた。
対策を施す前に現状の音を聴かせて頂いたのだが、ご多分に漏れず低音の音階がハッキリしない。
大型フロアー型スピーカーを床に直置きしてあるのだから、混沌とした中低音になるのは当たり前だ。
それではと、徐にクリニックを開始する事にした。
私は、これをこうするとこう変りますと宣言してから対策を行う様にしているが、今回も中低音の音階がハッキリしてティンパニーやコントラバスの低音楽器が、何処でどう鳴っているのか解る様になりますと宣言した。
実は、今回初めてお客様宅へ持ち出す新型ベースを設置したのだが、ウエストミンスターの様にハカマのあるスピーカーには非常に有効であり、ST-BASEとVESを組み合わせた効果が、比較的低価格で得られるというものだ。
近日中に発表するので、大型スピーカーをご愛用のユーザーには期待して戴きたい。
さて、その効果だが、やはり付帯音が取れてかなり良くなった。
しかし、まだ固有の癖を感じる音だ。
今までの経験上、その癖は著名なR社のベースが発していると判断し、それを取外してみた。
やはり、直置きの方が数段良い。
このベースは、音を積極的にコントロールしようという考えで作って有るので、弊社の様に癖を取り除く対策を施す再には、邪魔になってしまうのだ。
そして、ST-BASEをセットした途端、スピーカーが唄う様になってきた。
後日、ご注文戴いた特注ケーブルの納品がてら再度クリニックへお伺いした。
詳細はK様のレポートにあるので割愛するが、クロック精度1ppmと発表しているSACDプレーヤーへLC-AudioのXO3/Dを搭載した途端に、恐ろしく良くなったという事実を付け加えておく。また、クリニックへお伺いする前のボリュームの位置と、全て対策した時とでは加藤様の感覚で20dbもの差があり、如何に効率よく空間へ音が放射されているかを物語っていた。
By 藤本