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藤本の辛口コラム


古くて新しいスピーカー その1


通常のスピーカーには永久磁石が使われており、その磁力を利用してボイスコイル→振動板を動かしている。

では、それより以前はどうだったのか?
マグネットの代わりに励磁型と呼ばれる電磁石を使っていたが、1番有名なのはWE555やTA4151を作ったWE(WesternElectric)だろう。

この励磁型スピーカーを新しいというのは何故か?
それは、技術の進んだ現代でも励磁型にしか表現出来ない音が有るからに他ならない。

それを一口で言えば、「立ち上がりの速さ」だ。
これはオーディオの評価で良く使われる言葉だが、私に言わせると音を聴いて速いと思っている内は本当の速さではなく、生演奏に匹敵する鋭いアタックと柔らかさを再現出来てこそ真の速さなのである。

では、磁気回路によって何故音質の差が出るのだろうか?
磁石の材質によって差が出るのは良く知られており、アルニコ→フェライト→ネオジュームと世の情勢や技術革新によって変化してきたが、未だにアルニコのファンが多いのは事実である。

また磁石以外の磁気回路の材質によっても音質は大きく左右されるが、ややこしくなるのでここでは永久磁石の話は置いといて、電磁石つまり励磁型スピーカーについての評価に留めたいと思う。

 
古くて新しいスピーカー その2  

さて、高価で程度にバラツキのあるビンテージではなく現代の励磁型スピーカーに的を絞るとMAXONIC他が出てくるが、MAXONICは弊社のリファレンスとして君臨していたのでその素晴らしさを実感された方も多いだろう。弊社の試聴室 しかし、高価で大柄なMAXONICを誰にでも薦める訳にも行かず、
現実的な価格で提供出来る何か良いユニットは無いか?と模索していたところ、
ローヤル産業の励磁型スピーカーDEERシリーズに行き着いた。
http://www.royalsangyo.co.jp/field-coil

DEERには口径の異なる2種類のコーン型フルレンジとツィーター
そしてフルレンジと2WAYのシステムがあり、比較的低価格なので17cmのフルレンジとツィーターを取り寄せ試聴してみた。

さて、到着したユニットを鳴らすにもBOXがない・・・
何か適当な箱をと物色していたら、容積は少ないが取付穴まで合う箱が出てきた。
早速組込み、取り敢えず素性をチェックしようと音を出してみた・・・
  



 

通常では新品のユニットから真面な音が出る筈もなく、慣らしが終わってからの評価となるのに・・・
何と最初から生に近いアタックが出るのに驚いた!
フルレンジだから決してレンジは広く無いが、聴いていてツィーターの必要性を感じさせない素直さがある。
ツィーターは置いといて、取り敢えずそのまま試聴室で鳴らしておく事にした。
 


古くて新しいスピーカー その3
 

2〜3日してASCのメンバーが来店し、カウンターでコーヒーを飲みながら試聴室の音を気にしている。
外に漏れるウッドベースの音が生音の様に聴こえ、只者では無い新しいスピーカーが入ったのを察知したという!?

実は、MAXONIC DS701/DENTECが千葉に嫁に行き、次は何を入れようかという話から、VivitAudioのGYA3でも入れようかと半分冗談で話していた。
オリジナルノーチラスを使っている彼は、DENTECシステムを導入された埼玉のお客さん宅でGYA3が凄い音で鳴っていると聞き期待していたのだ。

彼を試聴室に案内したところ、てっきりGYA3が鳴っていると思った彼は見た目と出てくる音の余りのギャップに「エ〜」と声を発したまま顔を引きつらせた。
しかも2本で20万円弱のユニットと聞いて2度、鳴らし始めて2〜3日と聞いて3度驚き、MAXONICでも試聴室の外でこんな音がする様になるには相当時間が掛かったのに、何これ!!を連発していた。

勿論、38cmのMAXONIC DS701/DENTECと周波数レンジでは比べようもないが、生音に近いエネルギー感が素晴らしく、それが部屋の外で判ったのだという!
 


古くて新しいスピーカー その4
 

DEERを導入した私の狙いは、オリジナルシステムの開発だ。
完成を急ぐ為2WAYシステムを導入し、それと比較しながら開発を進める事にした。
果たして入荷したRSS170だが、又してもイキナリ鳴った!?
当然だが、いい加減な箱とは違い最低音の伸びと弦の艶やサックスの微濁音も自然に出てくる・・・
今迄お預けにしていたが、このツィーターも只者ではないと判った。
 

DEER RSS172写真

 
それも、エージング?そんなもの関係無いよ!と言わんばかりに・・・
私はこれまで振動系のエージングにかなりの時間が掛かるのだと思っていた。
しかし、これを聴くとどうやら違う様だ。
まさかとは思うが、磁気回路にエージングが必要という事は無いだろうか?
ならば、ユニットを丸ごとSC処理して音が良くなるのも説明が付き
励磁型のMAXONICではその効果が驚くほど大きかったのも理解出来るのだが・・・
 


古くて新しいスピーカー その5
 

DENTECオリジナルスピーカーは密閉型の2WAYに決まった。
ボックスを作っている時間はないので、マンガーユニットを入れていた箱を流用する事に・・・
 
マンガ−ユニットを入れていたボックスに組込み
 
マンガーの方が口径が大きいので、合板でアダプターを作り早速フルレンジで音出し開始・・・ ツィーターもローカットのみで追加・・・
 
予想通り容積の大きい密閉では、低域がだら下がりでツィーターとのレベル差も目立つ ・・・
 
RSS172(170のバスレフポートが背面に変更され型式が変わっていた)では、単にツィーターをコンデンサーでローカットした6000HZ -6dbだが、密閉ではそう簡単にはいかない・・・
バラックで2WAYのネットワークを作る事にした。
 
勿論DENTEC定番の空芯コイル-12dbだが、クロスを3000HZに下げツィーターを-4dbにセットする。
  
ネットワーク写真  
正に音出し3秒! 「確認音源14YA」の井上先生のウッドベースが本物に近い音で鳴りだした。
色々経験してきたが、ここ迄素直に反応するユニットは始めてだ!
それにしても、正しい変化かどうかを測定器より明確に判断できる確認音源は有難いものだ!!
たった2日でここ迄進める事が出来るのだから・・・
 


古くて新しいスピーカーその6  

1週間鳴らしっぱなしでエージングも進んだ頃、丁度ミンガスの井上先生が半田素麺を手に来られた。
私は半田のうどんが好きなんですと話したら、先生は半田屋の素麺しか食べないと言われ、沢山頂戴した(早速今晩味見するのが楽しみだ)
 
さて、ものはついでにDEERの音を聴いてもらったら・・・
何といきなり「これで良いんじゃないの!」という答えが返ってきた。
自分の楽器(ウッドベース)と自分の店の音で判断されているのだから、これ程確かな事はない!
「オーディオファンはもっと低音が欲しいと思うだろうが、ミュージシャンとしてはこれで充分だ」ピアノも中西さんのタッチや音色まで再現されているとの事。
 
イキナリ合格で拍子抜けしたが、当初からWウーハーを目標にしており、振動伝達スピードの向上とユニットの放熱を兼ねアルミ板フロントバッフルを発注した。
 
ところで、晩飯の半田素麺は抜群に美味かった!
太めでコシが有り、喉越しが最高だった!!
これなら、うどんより薄めの汁で食べられるし薬味との絡みも良い・・・
次の徳島で半田屋に寄ってみる事にしよう・・
 


古くて新しいスピーカーその6  

一週間後に出来上がってきたら、実験用なので仕上げを頼まなかったにしては結構綺麗だった。
 

古くて新しいスピーカー その7 アルミフロントパネル
 
スピーカー
 

早速ユニットを組込み、ネットワークを追加して音出し開始・・・
ローエンドが伸び能率が上がった分ツィーターのレベルを上げなければならないが、
困った事にコイルを樹脂で固めているためタップが出せない。
かといって抵抗式のレベル調整は嫌なので、当面このままで行く事にした。
フロントパネルの放熱で温度は問題なさそうだし、段々マクソニックに近付いてくるから楽しみだ・・・

さて、次は励磁電源だ!
マクソニックで色々実験して結論が出たFM(ファインメット)トランスの定電流タイプを作る事に・・
 
 
電源の写真
 
 
やはり励磁電源は大事だ!
エネルギー感が全く異なり、音圧もかなり上がって聴こえる!!
これで井上先生のベースが本物に近く原寸大になったが、ピアノの高域が伸びず音色も異なる。
やはり高音のレベルを上げなければ・・・
 


古くて新しいスピーカー その8
 
 
遂にプロトモデルが出来上がった!
 

古くて新しいスピーカー その8画像1
 
古くて新しいスピーカー その8画像2
 
古くて新しいスピーカー その8画像3
 
 
その7でツィーターのレベル云々と書いたが、それは間違いだった。
ツィーターを固定せず箱の上に置いただけだったから、ウーハーの振動の影響を受けていたのだ。
ツィーターの前後の位置合わせは非常にシビアで、0.5mmズレても音色から音場まで変わってしまう。
時間差の少ない(立ち上がり立ち下がりの早い)励磁型だからここまでハッキリ差が出るのだろう。
 
肝心な音質だが、何と言ってもスリムな17cm × 2というシステムからは想像できないタイトで豊かな低音が出る。
マクソニックの38cmウーハーに勝るとも劣らないスケールには正直驚いた!
 
これだけ時間軸の揃った音は今まで聴いた事が無い。
ピアノのタッチも正確で生録の現場が目の前に再現されるから凄い!
今日はDENTECが世に問うべきスピーカーが出来上がった記念すべき日となるに違いない。
 
励磁型ユニット FMコア励磁電源 リニアフェイズ アルミパネル 適切なエンクロージャー SC処理 VEB
どれが抜けてもこの音は絶対に再現できない。
販売するとなると結構な金額となるだろうが、
フルレンジから始めて2WAY3スピーカーまで買い足しだけで発展できるのはお客様にとって大きなメリットとなるだろう。
こんなに先が見えて、その時々の過程を楽しめるスピーカーは存在しなかったのではないだろうか?
 
量産は出来ないが、その分質を追求した他にはない孤高のスピーカーとして君臨する事になるだろう・・・
 
DENTEC37年の成果を愛すべき音楽ファンに捧げます。
 
 
■ おわり ■

■こちらもご覧ください
>>> 古くて新しいスピーカー DENTEC RS-5
>>> DENTECオール銀単線リファレンスシステム


 

 

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