i-LINKについて

2004/2/6

一つのマスタークロックで全てのディジタル機器を動かす。
これは、スタジオなどの業務用機器では随分前から当たり前の様に行われてきた。
一般にも販売された業務用CDプレーヤーSTUDER A730などには、当初からワードシンク入力が付いており、外部クロックへ同期して動作する様になっていた。
しかし、音質に対して非常に有効なその機能は、一般的には最近まで生かされていなかったのではないだろうか?
ワードシンクが騒がれ始めたのは、ESOTERICのP-0が発売されたつい2~3年前の事と記憶するが、DCSのルビジューム発信機によるワードシンクを外付けすると、抜群に音質が良くなるというものであった。

弊社でもLC-AUDIO社のLclockXO2を使って44.1KHZを出力するWS1を限定生産したが、それは比較的短期間に20台を完売したので、P-0などのワードシンク入力に対するユーザーの要望が大きい事は理解していた。

しかし、D/Aコンバーターに同入力が無ければワードシンクジェネレーターを使う意味が半減し、CDプレーヤー本体のマスタークロックを交換すれば同等以上の効果が得られるのだ。

現在ではLclockもXO-3へと進化しており、音質に直接影響するジッター精度が2ppmから1ppmへと向上している。
WS1をご愛用戴いているお客様よりXO-3への交換をご依頼戴き、取替えてみると、やはり低音の解像度や音場の出方が大きく改善された。

X-TAL(水晶)でこれだけ改善されるのだから、もっと精度が高いと言われるルビジュームやセシウムなどの素子を使った高価なワードシンクを使用すれば、さらに音質が良くなるだろうと安易に想像していまいがちなのだが……
果たしてそうなのだろうか?

ここで、一つ気になる事がある。
前のコラムにも書いたのだが、LC-audioによると水晶やルビジュームといった発振素子の問題よりも、発振回路の問題の方が大きいと言うのだ。
例え高価な素子を使ったとしても、発振回路がゲートICを使った簡易型であれば、ジッター精度はそれ程良くはならない。
ワードシンクジェネレーターのメーカーが発表しているのは、相変わらず音質に直接関係しない中心周波数の安定度や温度特性であり、音質に対して重要なリアルタイムに揺れるジッター精度ではないと思うが、何故なのだろうか?不思議に思うのは私だけではない筈だが……。


2004/2/9

ところで、LC-AUDIOのホームページに外付けDACを使用した場合の音質改善方法としてD/Aコンバーター側のクロックを交換し、トランスポートとリンクする方法が載っている。
https://www.lcaudio.dk/com/dacdrev.htmをご覧戴いて、ピンとこられた方も居られるのではないだろうか?
そう!1987年発売のSONY CDP-R1 DAS-R1 定価60万円は、同じ様にツインリンク方式と称してクロックをリンクさせていたのだ。
音質の評価はかなり良かった様に記憶するが、現在のSONYの製品にその方式が存在しないところを見ると、1メーカーがその組み合わせでしか使えないセパレートCDプレーヤーを出しても、中々浸透しにくかったというところではないだろうか?
もし、SONYの方式に他メーカーが追従していたなら、切磋琢磨されてさらに良くなっていたに違いないのだが、それを思えば、この業界は随分遠回りをして自分で自分の首を絞めてきたのではないかとさえ思えるのだ。
 
そろそろ、本題に移ろう。
 
映像を全くやっていない弊社が、DVDプレーヤーのチューニングを行っているのはご存知の通りだが、音質は勿論、映像にも大きな改善効果が表れるので、DVD用マスタークロックが発売されて以来、既に100台以上のチューニングを行っている。
 
ところが、先日ASCの会長 山本紘市氏よりi-LINKの音質が素晴らしく良いとの報告を受けた。
会長の映像用機器はPIONEERのDV-S858AiとVSA-AX10Aiだ。
 
DVDプレーヤーの方は既にLclock XO2にクロック交換してあったのだが、何でも引越しの際にi-LINK用ケーブルを紛失し、しばらくして出て来たので繋いでみたらビックリしたと言うのだ。
そうこうしている内に、ある方から次の様なメールを戴いた。
i-LINKで接続した場合は、アンプ側のクロックでプレーヤー側もリンクして動作するので、音質に関してはプレーヤー側のクロックを交換しても意味が無いとの事だった。
 
と言う事は、音質に関してはジッターの少ないマスタークロックをDVDプレーヤーへ搭載するより、アンプ側のクロックでi-LINKした方が音質が良いと言う事ではないか……。
 
う~ん それなら、アンプ側のクロックを交換すればさらに良くなると言う事ではないか…
と言う事で、さっそくVSA-AX5i-Nのi-LINK用クロックをチェックしてみたら、在庫の無い22.5792MHZだった。
こうなったらやるしかない!早速、メーカーへ発注し、待つ事2週間……。
 
はたして、出て来た音は…
やはり、時間情報が正確になっている…音の厚みが違う……う~ん参った。
私は、これまでA&V機器にピュアオーディオ的音質を求めるなど論外だと思ってきた。
しかし、これは一体何だ!?
これからは、考えを改めなければなるまい… 恐るべしディジタル! 恐るべしi-LINK!
今後、出来るだけ多くのメーカーがi-LINKを採用し、素晴らしいディジタルアンプが出現する事を望む。

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